【天孫に嫁いだ富士山の女神、桜の美しさ、はかなさの象徴】
- 概要
- この神は日本を象徴する富士山の神霊であることもよく知られており、「古事記」では神阿多都比売(カムアタツヒメ)、「日本書紀」では鹿葦津姫または葦津姫(カヤツヒメ)が本名とされ、木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ)は別名としている。本名の「阿多」「鹿葦」は南九州の地名で、特に「阿多」「吾田」は鹿児島県加世田市付近と想定され、木花之佐久夜毘売がこの地方の神であったことを物語っている。
神話の中ではとても美しい女神として登場する、木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ)という名の「木花」というのは日本の代表する木の花(桜の花)を象徴しており、「木の花」が美しく「咲く」というのは物事の繁栄を象徴するものである。
ただ、桜の花は満開になればやがて散ってしまうように、この神は美しさと同時に花の命のはかなさも象徴し、人間の寿命に限りがあることを表す女神でもある。「古事記」の中の『【古事記】天孫降臨~木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)』のもあるように天皇の寿命が永久ではなくなったととが記載されていることから、その原型は人間の寿命が有限であることを表す市の起源神話だと考えられる。
この神は猛火の中で無事に出産したことから安産の神としても考えられるようになり、また、日本書紀には子を産んだ際、卜占(ぼくせん:占い)によって稲田を選び、その田で収穫した神聖な米で父のオオヤマズミ神が芳醇な酒を酒造し、三人の子の誕生を祝ったことからオオヤマズミ神を「酒解神(さけときのかみ)」、コノハナノサクヤビメを「酒解子(さけとけのこ)」と呼び酒の守護神としても信仰されるようになった。
- 別名・別称
- 木花咲耶姫、神阿多都比売(カムアタツヒメ)、鹿葦津姫、葦津姫(カヤツヒメ)、酒解子神など
- 神格
- 山の神、火の神、酒造の神
- 性別
- 女神
- 神徳
- 農業、漁業、航海、安産、子授け、火難消除、織物業守護など
- 備考
- 浅間神社は、「せんげん」と音読みされることが多くなっている。木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ)を祭神とする浅間系神社は、全国に約一千三百社を超え、その総本社の富士山本宮・浅間神社は、かつて駿河国一の宮で、富士山頂に奥宮があり山岳信仰、神仏習合により浅間明神、富士権現、浅間菩薩などとも呼ばれてきた。
- 神社
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・富士山本宮浅間神社(静岡県富士宮市)
・浅間神社(静岡市宮ケ崎町)
・浅間神社(山梨県東八代群)
・箱根神社(神奈川県足柄下群)
・當麻山口神社(奈良県葛城軍)
・荒田神社(兵庫県多可郡)
・梅宮大社(京都市右京区)
・その他、全国の浅間神社、子安神社、山神社
など。